17世紀の幽霊帆船・ヴァーサ(スウェーデン

17世紀の幽霊帆船・ヴァーサ
 17世紀に沈んだ帆船が、現在までほぼ完全な形で残っていて、それを引き上げ博物館にしてしまった場所が、スウェーデンのストックホルムにあります。帆船…いわゆる、名作アニメ「キャプテンハーロック」のアレを思い出していただければ、ぴんと来る人も多いはず。
Thumbnail:File:Vasa.quarterdeck.jpg - Wikimedia Commons/Zaphod
Vasa

 これです。もう若い人にはキャプテンハーロックと言っても分からないかも知れませんが、宇宙戦艦の船尾部がすごい美しくて印象的な漫画なんです。キャプテンハーロックの宇宙戦艦の船尾は、17世紀前後の帆船の後部をイメージしてデザインされたモノだと思うのですが…
 日本人にとっては、このファンタスティックな世界観が溜まりません。

 この帆船の名前は「ヴァーサ」といいます。1628年に処女航海を行っているのですが、ストックホルムの中心街の南東側にあった造船所、ヘックスガーデン造船所を出港して、僅かに数キロほど進んだところで、ちょっとだけ強い風に煽られ、あっけなく沈んでしまった船です。
 バラストが足りなかったという説が有力なようなのですが、そもそも出航前には一部の造船技師達は、この船の欠陥に気づいていたようなんです。船の上部に砲台を当初の設計より多く取り付けたり、甲板の面積を広げたり…。
 しかし、当時はスウェーデンきっての名君…いえ、ヨーロッパでも指折りに数えられる名君グスタフ・アドルフ2世の勢いがもっとも盛んな時期でもありました。グスタフ2世は、目立たなかったスウェーデンを一気に強国に押し上げ、バルト海を制したバルト帝国を築いた王です。
 その勢いに押されてなのか、当時の造船に関わる責任者に当たる人たちは、船の構造を見直すために竣工を遅らせる勇気も、それどころか、欠陥のことを議論することさえしなかったそうです。

 当時のスウェーデンの国威を表すかのような美しい、そして当時の最先端を行く戦艦は、観衆が岸で見送る中、岸から僅か30mほどの場所でつむじ風に煽られて、あっけなく沈んでいったのだそうです。

Vasa

 本当に岸から僅かなんですが、30から50名の船員が海にもろとも引きずり込まれたと言われています。それでも1200トンという帆船の中ではかなり巨大な船ですから、その船が沈む力というのは相当なモノだったのでしょうね。
 船を引き上げたのが1961年。当時の船員達の亡骸が、15名ほど見つかったそうです。でも、330年経ってでも、人に見つけてもらって、葬ってもらえた船員達は、それでも幸せだったのかも知れませんね。え…飾られてる…?(汗)いや、それでも…海の底に取り残されるのと、後の時代に飾られるのと、どっちが幸せか。イヤ微妙…。

Vasa masts

 ヴァーサ号は、当時はまだフランスやドイツなどの造船技術に追いついていなかった頃のスウェーデンの船艦です。それでも、当時はヨーロッパきっての巨船であり、また、積み込んでいた大砲も、当時の最先端を行くモノで、相当高価なモノが積み込んであったそうです。当時はまだ「砲船」の時代の幕開けの頃です。砲門は2~30年も使えばだめになっていたそうなのですが、この船の砲門は1世紀近く持つというもの。また、船体の装飾も見ての通りの豪華さで、日本の武士が相手を威圧するために甲冑に装飾していたのと同じような意味で、とても凝った美しいモノでした。
 この戦艦が沈んだときのスウェーデンの国家的損害は計り知れないモノだったそうです。

…どうして、本当にあと少しだけ工期を延ばして完璧にしなかったのか…。スウェーデン軍では、小型の戦艦を数隻失っていたこともあり、グスタフ2世は戦艦の建造を急がせていたという側面もあるようです。
 ただしかし、沈んでくれたからこそ、現在その美しい姿がよみがえったのかも知れません。

Vasa-laiva

 沈没船と言えば、魚の住処になり、珊瑚が月、貝が付き、ボロボロに壊れたモノを想像します。しかも330年近く海の底にあったモノです。ヴァーサ号が沈んだ場所は、バルト海という緯度の高い場所にある内海で、とても海水温が低い海なんです。出来てまもなく無傷で沈んだ船は、ほとんど損傷のないまま現在によみがえりました。
 なんか、終わってみれば、すべてが人類にとっては宝物になるのかも知れません。なんか、ものは言い様ですね。書いている本人が言うのもなんですが…我ながら…

 なんの言っても、スウェーデン人にとっては、英雄グスタフ2世が残した贈り物というわけで、もっとも人気のある観光地の一つなんだそうです。
 スウェーデンの中心から、がんばれば歩いてでもいける距離にあるので、是非ともコレは、一度は見ておきたいモノです。行く前に、ちょっとだけグスタフ2世の勉強をしておくと、もっと楽しめるかも知れません。(グスタフ2世アドルフ (スウェーデン王) - Wikipedia




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Comment
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はじめまして
凄い神秘的というか、ロマンを感じますね。実物を拝んでみたいものです。

16
Re: はじめまして
 全くです。この頃の日本は徳川家光の時代です。なんか不思議ですよね。スウェーデンとか…死ぬまでに一度いけるかなぁ…(汗)スウェーデンはあまり旅行先の候補には挙がらないと思いますが、結構おもしろそうな場所あるんですよね。。

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