忘れ去られた首都の廃墟・アニ(トルコ

忘れ去られた首都の廃墟・アニ
 トルコの東の果て、アルメニアとの国境付近に広大な荒れ地があるのですが、そこにはぽつんぽつんとコーカサス地方独特のどこかローマ風建築が混じったような、立派な建築物の廃墟があります。
Thumbnail:By mx. [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons
 そうですね、世界観としては、核戦争後の地球を描いた北斗の拳に出てきそうな荒れ地と廃墟といった様相でしょうか。或いは、遊牧民が世界の果てで見つけた、かつて異邦人が住んでいた幻の街の跡…とでも言ったところでしょうか?
 荒廃が進んでいるので、だだっ広い、茶色い枯れ草がおおう荒れた草原に、ぽつんぽつんと遺跡が残っている感じです。

Ani and the Ahuryan river

 ここは、「アニ(Անի)」という都市の跡で、現在ギリギリのところでトルコ領となっているのですが、実は遙か昔に君臨していた強大なアルメニア王国の首都だった場所です。その当時は、東ローマ帝国のコンスタンチノープル、ペルシアのバグダッド、エジプトのカイロなどに匹敵する大都市だったと言われています。地理的にコーカサス地方の南部は、ヨーロッパと中東を結ぶ主要な地域だったので、何処にどんな大都市があっても驚かないのですが、ただここは高原で、近くに海があるわけではなく、巨大な川があるわけでもないので、その意味では驚嘆に値するのかも知れません。
 1001の教会の街との異名も取るアニの街は、芸術的にはもっとも進んだ大都市だったそうで、現在も僅かに残る教会の廃墟がかつての繁栄を物語っています。

Katedra ormianska w Ani

Ani (Surb Amenaprkich)

 古代のアルメニア系列の王朝は、一時は大勢力を誇っていたのですが、やがてローマやペルシア方面、エジプト方面の強国に支配される時代が続きます。あまりにも主要な地域だったので、その時代時代の強国の属領になる地域だったのですね。それでも、3世紀頃から徐々に力をつけ始めたと考えられているのが、「バーグラートニネ(Բագրատունիներ)王朝」と呼ばれるアルメニア系貴族が継承した王朝で、10~11世紀にかけて、首都アニとともに最盛期を迎えます。
 しかし、11世紀半ば、家督争いが始まると、東ローマ帝国が起源とされるビザンチン帝国がチャンスとばかりに進行を始めます。一度はそれを撃退したのだそうですが、一度弱まった国力は簡単に取り戻せなかったのかも知れません。やがてビザンチン帝国の支配下へ入ることになります。

Ani: Tigran Honents Kilise

 しかし、11世紀も後半に入ると、中東で勃興した遊牧民系の強国セルジューク朝に占領されます。このとき、アニの街は大きく破壊、略奪されることになります。しかし、12世紀には、バーグラートニネ王朝の後継とされる王朝も復活を許されたそうなんですが…。
 そうです、13世紀半ば、日本でも撃退に苦労したことで有名なモンゴル帝国が一気に怒濤のように押し寄せてくるわけです。
 その後も各時代の大帝国に支配を受けることになるアニの街。やがて、最後の強大な国家、オスマン帝国の時代には、かろうじて城壁が残る小さな街になってしまっていたそうです。そして、18世紀には放棄され、そのままその後ロシアがこの地方に進出してくると、このアニの街は完全に忘れ去られることになったそうです。
 やっぱり、凄いですね、この黒海南部の地域の歴史は…。

Cathedral of Ani

 その後、歴史の観点からアニの街の遺跡発掘が始められ、再びアニの街が再発見されることとなります。
 しかし、時代が悪く、ちょうど発掘が進んでいる頃は第一次世界大戦が進んでいる時代です。遺品はアルメニアの博物館に収容されていったのですが、オスマン帝国の侵攻があり、アニの街周辺はオスマン帝国の支配下に入ります。
 やがて大戦が終わると、領土が確定していくのですが、アニの街はギリギリでトルコ領に確定してしまったようです。

Turkey

Ghost city

 すごいですね。一体このただだだっ広い荒れた土地に、当時どんな大都市があったんでしょうか?
 想像の範囲を超えていますよね。芸術的にももっとも進んでいたと言われる大都市。
 ちなみに、今回の記事は「タレコミ」をいただいたモノです。ありがとうございました。こんな凄いところがまだまだ世界にはたくさん……。

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Comment
18
「アナトリア半島」はミステリアス
廃墟「アニ」や「アルメニア帝国」とは裏の世界史に詳しいですね

間違っても山川出版「詳説世界史」にはアルメニアや大虐殺の暗黒史は記載ありません(笑)

アナトリア(トルコ)はちょっと興味があったので約1月かけて滞在しております
トルコ東部、アララト山(方舟で有名)が見えるあたりは政治的にごちゃごちゃしており日本人には不法地帯ですね。

アルメニア・グルジアは国境だけど越すに越せない"政治的紛争"のところ

東部に行きましたがイラン人がやたら難民か移民でうようよ

一人ぐらいアルメニア人に逢ってみたいと思ったんですが居なかった(迫害だしね)

19
「アナトリア半島」はミステリアス その2
「アルメニア帝国」はトルキッシュから迫害され大虐殺の対象

イスラエルがユダヤが迫害のなんたらでしょうがアルメニアも負けていない(笑)
今のアメリカ人のノーベル賞受賞者はユダヤ系(比較的公表)が大半だけど、アルメニア系もかなりの数

優秀なる民族です。

21
Re: 「アナトリア半島」はミステリアス その2
 アルメニア人は優秀、そうなんですね。
 実はアルメニアに詳しいわけではなく、Wikipediaからの知識を、ざっくり要約したモノです。このサイトでいろんな場所を調べていると、おそらく多々間違っていながらも、ヨーロッパ、そしてヨーロッパ周辺の大きな流れが何となく見えてきて、「アルメニアはおそらくこんな国だったんだろうな」と言うのを想像しながら書いたモノです。
 略奪、破壊、そして、人も…という記述、確かにウィキペディアにもありました。ブログの方針からそういう表現は出来なかったのですが…とにかく場所が悪いですよね。ヨーロッパから強国が、ペルシアから強国が、時代ごとに交互に塗り変わります。この辺りは…どうしようもなかったんでしょうね。。
 しかし、実際にこの辺りまで行かれるとは凄いですね。
 トルコの地方って、ネットでもなかなか簡単に調べきれない地域ですから…

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